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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)403号 判決 1970年2月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人赤鹿勇、同岡田善一の上告理由第一点ないし第四点について。

本件事故は加害自動車の運転者高尾十太郎の運転上の過失によつて生じたものと認めて、上告会社につき、自動車損害賠償保障法三条但書による免責を認めず、また、被害者である被上告人らの両親の過失は認められないとして過失相殺の算定を適用しなかつた原審の各認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係に照らして、いずれも正当として是認することができ、原判決に所論のような法律解釈の誤りや理由不備等の違法は存しない。論旨は、原審の認定しない事実や独自の見解を前提として、原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

同第五点について。

不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害として、その賠償を求めうるものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(昭和四一年(オ)第二八〇号、同四四年二月二七日第一小法廷判決、民集二三巻二号四四一頁参照)。原審も、これと同趣旨の見解に立ち、後見人選任の申立を含め、本件事故により被つた損害の賠償を訴求するための手続の遂行を弁護士に委任し、その報酬として支払いもしくは支払を約した費用のうち、被上告人両名につきそれぞれ金七二万五〇〇〇円づつを、本件事故により通常生ずべき損害として、上告会社をして賠償の責に任ぜしめるのを相当としたものと解せられ、その判断は正当である。そして、右判断にあたつては、その斟酌した事情を遂一具体的に説示しなければならないものではない。同判決に所詮の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 大隅健一郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠)

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